2008年05月01日

「BUMP OF CHICKEN」と「ウラニーノ」

 さて、ここに来ていらっしゃる皆さんなら、「疾走感のあるメロディ」と「物語歌詞」と言えば、思い出されるのはBUMP OF CHICKENでしょう。ですが、ならばウラニーノが彼らをリスペクトしているとかインスパイアしているとかパクっているかと言えばまったくそんな事は無く、むしろ似ている場所のほうが極めて少ない……。『THE LIVING DEAD』では、死や絶望と向き合った、重く激しい曲が並んでいましたが、『やぶ医者とわたし』にはそれらは皆無です。バンプの描く物語歌詞と、ウラニーノの描く物語歌詞。その決定的な違いを、非常に分かりやすく比べることが出来る楽曲があります。

 BUMP OF CHICKENのメジャー1stアルバムに収録されている「ダンデライオン」という楽曲があります。また、ウラニーノの3rdアルバムに「花ともぐら」という曲があります(ここで無料で聴くことができます)。実はこれらは、「花に動物が恋をする」という共通の特徴を持っています。「ダンデライオン」では、サバンナに住む孤独のライオンが、つり橋の向こうのタンポポに強く感情を揺さぶられます。「花ともぐら」では、夜しか外へ出れないもぐらが、昼しか開かない花を毎晩見上げるという曲です。設定自体は似ていますが、物語が進むと、楽曲はお互い決定的に違う方向に動き出します

 「ダンデライオン」でのライオンとタンポポは、雷鳴という強烈な出来事によって運命的に切り離されます。ライオンは血まみれになりながらも、タンポポを強く想い、雄叫びを上げます。タンポポから貰った暖かな温もりを胸に抱きながら、転生後はキミの姿へ生まれ変わりたいと願います。ライオンの激しい感情と、ドラマチックな展開が印象的です。

 一方の「花ともぐら」では、二人の運命を変える出来事は何も起きません。ただただ時間だけが残酷に経過します。花は次第に枯れていきます。でももぐらは何も出来ません。臆病にも巣の中で、愛しい花が枯れてしまう日を恐れてガタガタ震えているだけなのです。花から落ちた一枚の花びらを抱きしめながら、泣くことしか出来ないまま、曲は終わります。

 もしも、もぐらがライオンのようだったならば―――、死をも恐れずに、たった一度でもキミの姿を見るためなら、昼間でも巣の外へ飛び出していったでしょう。もしもライオンがもぐらのようだったならば―――、タンポポを心配する以前に、もうキミと二度と会えなくなってしまうのが悲しくて、悲しくて、ひたすら崖の下で泣き続けることしか出来ないでしょう。……このように、ざくっと言ってしまえば、BUMPの物語の主人公は自分の意思を貫く強力な信念と情熱的な感情を持ち合わせています。一方のウラニーノの物語の主人公は意志薄弱で行動力も無く、後ろ向きで弱虫で泣き虫で情けないのです。前者のライオンは力強く、カッコ良く、私たちに勇気や感動を与えてくれます。一方のもぐらは……、みっともないし、見習う箇所はひとつもありません。が、それでも、どこかいじらしくて、不思議と可愛くて、なぜだか切なさすら抱いています。また、人によっては自分を重ね合わせてしまう場合もあるのではないでしょうか?みっともないのに、どこか憎めない。弱虫だけどその想いはまっすぐで、真摯で、暖かい。……ここに、ウラニーノの特徴的な物語歌詞の魅力があると言えるでしょう。

 結果、完成した作品は「物語的」という点で大きな共通点を抱いていますが、一方で両者の原点はまったく違う場所から来ていると、これでお分かりになられたと思います。

 では、なぜ私は『THE LIVING DEAD』と同列で『やぶ医者とわたし』を紹介出来るのか?……音楽性も、メッセージも、世界観も、まったく異なる二つの作品ですが、ただ一点、独特かつ魅力的で強烈な物語世界観が完成されているという点において、『やぶ医者とわたし』は『THE LIVING DEAD』に匹敵する力を持っていると感じたのです。

 もし、以上の文章を読んで興味が沸きましたら、ぜひウラニーノのライブを見に行ったり、CDを手にとって見たりして下さい。ウラニーノは皆さんの期待を裏切りません!……きっと。


『ウラひか』
http://www.numatake.com/music/ura/

ウラニーノって誰ですか?

 ウラニーノとは、主に埼玉県を中心に活動しているインディーズ・ロックバンドです。2003年に新星堂が開催しているオーディション「CHANCE!」で全国グランプリを獲得したのを皮切りに、現在まで4枚のオリジナルアルバムをリリースし、年間100本を超えるライブも精力的に行なっています。

 その大きな特長は、ヴォーカル&ギターの山岸さんが書く楽曲の数々にあります。「ぼく」を主な主人公に、全編にわたって徹底的に物語的な歌詞を展開している作品がほぼすべてを占めています。描かれる物語は、時にほのぼの、時に哀しげ、時に懐かしく、時に苦しい……。小学生、中学生、高校生、そして大学生、社会人―――。様々な立場の「ぼく」の、ちょっとなさけないけどいじらしい、そんな素敵な物語がエモーショナルな演奏に乗せられて、私達の元へと届きます。

 また、ライブ・パフォーマンスはCD以上に(笑)パワフルかつロックで、CDを出すたびに曲の物語を再現した漫画を描いて無料配布してしまうドラムの小倉氏、自称アキバ系ヲタクでライブのたびに暴れ回るベースのピストン氏、そして時にアグレッシブに、時にキーボードの弾き語りで切なく歌い上げる山岸氏の3人の演奏は高く評価されています。2007年12月には旧渋谷公会堂でワンマン・ライブを敢行するなど、着実にファンを広げつつあります。

 一度聴いたらヤミツキになる、不思議な世界観を持ったロックバンド、「ウラニーノ」。これからの注目株です!

公式プロフィールはこちらから。
http://www.uranino.com/member.html


『ウラひか』
http://www.numatake.com/music/ura/