2012年10月15日

#72 pinkie【楽曲解説・歌詞解釈】

#72 pinkie
シングル『HAPPY』(10.04.14)収録 ― track.2

←#71 HAPPY 『HAPPY』track.2

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■基本的情報
16枚目のシングル『HAPPY』に初収録されたカップリング曲。「HAPPY」のシングル化が決まった際、「カップリングには“桜”の曲を書いてくれ」というプロデューサーからのオファーを受け、作曲された。

■一般的解釈
歌詞の中には「桜」と一言出てくるものの、一般的な「桜ソング」とはかなり印象を異にする楽曲。藤原はこの曲を「観念的な曲」(=具体的ではない曲)と語っており、「絵の具の色が混ざって色が変わって……7〜8色ぐらいの水彩絵の具が、水と一緒にグチャグチャって混ざって『何色の部分なんだろう?』っていう、その色が変わっていく境目みたいな歌詞だと思う」とも語っている。
サウンドは、『jupiter』〜『ユグドラシル』期を彷彿とさせるロック・サウンドだった「HAPPY」とは対照的に、明確に『orbital period』以降であることが解る、ストリングス・シンセサイザーなど、バンドサウンド以外の要素が多く含まれている作品。サビの疾走感とギターの音色も、「sailing day」よりは「カルマ」に近いものを彷彿とさせるものだ。
また、フェードアウトで終わる数少ない楽曲のひとつである。


■個人的読み解き
かなり難解な曲です。
情景描写も少なく、楽曲の視点も明言されないまま二転三転します。
最もキーとなる<未来の私が笑ってなくても あなたとの今を覚えてて欲しい>という歌詞からまず難しく、この「あなた」とは誰なんだよ、という壁にまずぶつかります。これを「自分以外の大切なひと」と訳すなら、その人との約束を果たせない(かもしれない)主人公が「未来の私」へ今を歌う曲。これを「自分自身」と訳すなら、過去の自分との約束を果たせないままの主人公が、いつか憧れた「未来の私」への想いを「過去の自分」に告げる曲、と読むことができます。これは、どちらでも良いでしょう。つまり自分の中の自分とひたすら一人喋りするという解釈になりますが、BUMP OF CHICKENの楽曲としては、これは決して珍しいものではありません。
<心の始まりは強すぎて>という一節は、何かに“憧れた”り、“夢”と名づけて遠い先の自分に掲げた約束だったりする。そうすると<言葉>だけでは自分の、その想いを支えきれない。けれども付け加えられるのは「言葉」しかないから、いろいろ“言い訳”して“理論武装”して、自分を鼓舞するしかない。でも結局かえってわからなくなってしまって、<弱くなって終わりにした>。つまり主人公は、「約束」を半ば諦めてしまったのだ……とまでは読み下せます。
<自分のじゃない物語>という一節。「約束」は、過去の自分が考えた約束なわけだから、つまり<(今の)自分(が考えたもの)じゃない物語>。そうして過去の自分を切り離してしまい、約束から逃げ出す、あるいは身を隠している主人公の姿が見えます。
でもそれは決して弱い行為ではなくて、このつらい<毎日>で息をするためには、仕方がなかった。仕方がなかった……。でも、その「仕方がなかった」って、誰に向かって言っているのだろう? <あなたのためとは言えないけれど/あなた一人が聴いてくれたなら もうそれでいい>。何とか繋がる……でしょうか。
<約束は誰かと作るもので 誰かが頑張り屋で>は、自分より頑張ってい(るように見え)て、どんどん自分や他人が掲げた目標をクリアしている<頑張り屋>。あるいはどんどん他人に<約束>を作らせてしまう<頑張り屋>。それに追いつけなくなってしまって、約束した相手だってとっくにそれを忘れてしまっていて、でも自分はまだ「果たせてない」わけだから、忘れられない。まだ<はじっこに隠して持ってる>。
つまり、この<ひとり見た桜>と手を繋いでいたのは、過去の“夢を抱いていた”自分自身なのではないか?
<過去からの声は何も知らないから 勝手な事ばかり それは解ってる>という歌詞にも繋がりますが、過去の声高な自分自身から逃げ切れなくて、それでもそっと対話し続ける「今の自分」。昔に掲げた「未来の私」がやがて「今の私」と入れ替わり、その私が笑えていなくても、それでも「今」の私と、笑うことは出来ないのかな?
自分の中で葛藤し、しかし最後には自分自身で結論付けている、そういう楽曲と言えるでしょう。<終わりにしたら始まって 言葉も心も超えて/ささやかな響きになって さよならの向こうへ>という復活への物語は、「オンリー ロンリー グローリー」の後半をも彷彿とさせる一節です。
……と、ほぼ1行おきに解釈を挟まなければ読みきれない、とにかく要素の多い、難しい曲です。疾走感もあり、なかなかの人気曲のようですが、ちょっと僕にはヘヴィだなぁ……。
ずっと後になりますが、2012年にリリースされた「firefly」は、「夢を諦めた人」への強い応援歌になっています。「firefly」はかなり視点的にも整理された、解釈もしやすい、テーマのはっきりした曲です。例えば「firefly」と実は同じテーマで、より内省的ものを表現したのが「pinkie」だ、と捉えてみると、この曲の別の一面が見えてくるかもしれません。
しかし、ここのコメント欄は荒れそうだ……。




※この楽曲に関するメンバーのインタビュー記事を集めています!
コメント欄に、必ず「出典の雑誌・ページ・発言者(例:MUSICA 2011年1月号 45ページ・藤原)」を添えて、ぜひお寄せ下さい。
ゆっくりペースで追加・追記してゆき、より充実した記事にしていきたいと考えています。


posted by ゆうろく at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | ■カップリング曲
この記事へのコメント
このHPを最近見つけ、たまに覗いておりました!
個人的な読み解きが面白いです!
私は、pinkieの「忘れたら」にかかってくる意味は、GOODLUCKの「忘れたそのままで〜、思い出してもそのままで」と通じるところがある気がします。最近のfireflyのインタヴューで「夢やあこがれ」って言葉が出てきてたので、それをそのまま用いて考えると・・・
砕け散ってしまったので終わりにしたいけど、忘れるにはちょっと時間がかかりそう。
思い出してほしい今(隣にいた事・手を繋いでいたこと)を、あなたが思い出してくれれば、その先、私は忘れようとしなくていいし、泣かずにすむ。
そして、「言葉の始まりが強すぎる」夢・あこがれに対して、何かを伝えたくて歌いかけ続けてた今(現在からみて過去)。それに気付いてほしい。そうすれば、あなたも泣かなくてすむ。(←宇宙飛行士〜の「言葉で伝えても、伝わったのは、言葉だけ」を連想してしまいます)

このHPを読んでいると、色んな発見があります。
私もBUMP大好きなので、ここに何かコメントを残してみたくなりました。
これからも更新、楽しみにしております!
Posted by はじめまして at 2012年10月15日 13:31
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