2012年10月08日

#82 66号線【楽曲解説・歌詞解釈】

#82 66号線
アルバム『COSMONAUT』(10.12.15)収録 ― track.9

←#71 HAPPY 『COSMONAUT』track.9 #83 セントエルモの火

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■基本的情報
6枚目のオリジナルアルバム『COSMONAUT』に初収録されたアルバム曲。2008年12月に作曲された「3曲」のうちの3曲目。「HAPPY」「セントエルモの火」が書けた後、スタジオに入るまでの時間で書いた作品。
この曲について藤原は、「ある親友」へ向けて唄ったものであると説明しており、「66号線」というタイトルについても、「その親友に縁の深い数字が66だから」だとしている。「この歌詞はしゃべるのが恥ずかしい」とも語っており、なかなかメンバーから言葉を引き出し切れているとはいえない曲だろう。


■一般的解釈
藤原楽曲としてはとても珍しく、もしかしたら「リリィ」以来ではないか、というほどにストレートなラブソング。とはいえ異性に向けられたものではなく、BUMP OF CHICKENのプロデューサーであるMORの森徹也に贈られたものである。「66」は森徹也のラッキーナンバーらしく、『人形劇ギルド』に登場する「66ギルド」の名称は、藤原自ら「ディレクター(当時の言い方、最近メンバーも「プロデューサー」と言うようになった)のラッキー・ナンバーです」と語っている→http://www.barks.jp/feature/?id=1000026866。なお、贈った相手をマネージャーである高橋ひろあきとする説もあるが、間違い。
そう解釈してみると、<声を無くしたら僕じゃなくなる それでも好きだと言ってくれますか>という辺りは、歌手である藤原とプロデューサーとの関係をダイレクトに描いていることが分かるし、<こいつにはなんにも敵わないなって 笑いながらさ/実は結構 傷つくんだぜ>という表現にも膝を打つものがあるだろう。
とはいえ、藤原楽曲で<それでも好きだと言ってくれますか>というストレートな表現が出てくることは極めて珍しく、シンプルかつストレートなラブ・ストーリー、と読むことは十分可能だろう。


■個人的読み解き
大好きな曲です。
主人公の「あなた」への想いが美しくも切実で、暖かでキャッチーなメロディーも相まって感動的です。アルバムの中盤に突然こんなラブソングが流れてくるわけですから、打ち抜かれないわけにはいきません。
そんな中でもシニカルな藤原。<声をなくしたら僕じゃなくなる>、<僕を無くしてもあなたでいられる>、<あなたを無くしても僕は生きていく>……。互いに好き合っている、なんて言葉がたとえば嘘っぱちで、もしかしたら利害の一致で好き合っているだけかもしれないし、仮にどれだけ「僕」のことがこの世の全てだよ、と言ってくれていても、「僕」がこの世からいなくなったって「あなた」は生きてゆけるという事実。たかがそんな程度の関係だよ。それでも、それでも「好き」だと言ってくれますか? ……この切実な視点は、旧来のラブ・ソングにはない、しかし見事な表現です。何で僕らは好き合えているのだろう? 本当にたったひとつのことで、実は壊れてしまうかもしれないこの関係を、けれどもこれだけは疑わないで欲しい、と歌うこの曲は、それまでの愛の表現が取り落としてしまってた何かを、的確にあらわしていると言えるでしょう。
特に個人的には<僕にだってきっとあなたを救える>という、もう、歯の浮くようなパンチラインにメロメロ……。そもそもこのアルバムは、「あなたと私は断絶している、あなたの助けに僕はなれない、でも傍にいさせて欲しい――」というメッセージが全編において貫かれています。そんな中で、この曲だけは「僕にだってきっとあなたを救える」と、より踏み込んで「あなたの助けに僕はなれる!」と断言しています。本当にこの曲だけです。長い間BUMP OF CHICKENを聴いていると、これほど藤原が(こういう場面で)断定的な言葉を使った場面など久しく見ていないものですから、なんだか感無量になってしまいます。
余談ですが、『COSMONAUT』の一年遅れレコ発ツアーだった「GOLD GLIDER TOUR」にひとり参戦した時――、僕の前には、一組の若いカップルが立っていました。しかしバンプはあまり聴いたことが無いらしく、ちょっと反応は鈍め。けれどもこの曲の演奏が終わったときに、はじめて互いにそっと見つめ合って、「いい曲だね」「いい曲だったね……」と言葉を交し合っていたのが、なんだか良かったなぁ……。なんかほんとに「爆発しちゃえ!」って感じだったけれど、きっと二人にとって、特別な曲になっただろうなぁ……。
たまたまこの3回の更新で、「藤原の○○に宛てた曲だ」なんて裏話の解説が続きましたが、忘れないで欲しいのは、私たちはそれをどうとでも読み替えて、書き換えてしまってもよいということ。裏話を知ることで、曲をより深く読み取ることが出来ます。けれども行き過ぎて、この曲を「藤原とプロデューサーの曲だ、それ以外の読み方は誤読だ!」としてしまうのは、それこそ本当にバンプの楽曲の見方を狭めてしまうものです。作られた背景を踏まえた上で、けれどもあなたの物語こそを投影させて、やがては自分にとっての特別な曲になってゆくことが、BUMP OF CHICKENの本当の魅力だと僕は思います。




※この楽曲に関するメンバーのインタビュー記事を集めています!
コメント欄に、必ず「出典の雑誌・ページ・発言者(例:MUSICA 2011年1月号 45ページ・藤原)」を添えて、ぜひお寄せ下さい。
ゆっくりペースで追加・追記してゆき、より充実した記事にしていきたいと考えています。



posted by ゆうろく at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | ■『COSMONAUT』
この記事へのコメント
通りすがりで今日初めてたまたまここを訪れた者ですが、
凄く良い記事で、来て良かったな、と思いました。
ありがとうございました。
Posted by 通りすがり at 2017年01月22日 20:45
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