2008年12月27日

カメラマン・アジカンの目線『サーフ ブンガク カマクラ』

ASIAN KUNG-FU GENERATION 5th Album
サーフ ブンガク カマクラ
カメラマン、アジカンの目線。
現在、ウェブサイトの再リニューアルに着手しています。表示が崩れる場合がありますが、ご了承下さい。
さーて、今日はおススメアルバムを持ってきましたよ!
ほほう、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『サーフ ブンガク カマクラ』?最近どのブログでも見かける作品じゃねーか……。
だけど良いんだよ、これが!この作品はアジカンの5枚目のオリジナルアルバム。全ての曲で湘南を舞台としていて、それぞれに江ノ島電鉄の駅名をタイトルに冠しているコンセプトアルバムです。
この作品の大きな特徴として、作品延長の短さが挙げられる。多くの曲が3分を切っていて、全部通して聞いても30分ほどしかない。
一曲の密度が決して高くないから、もともと断片的な情景を描く歌詞を得意としてきたアジカンには好都合のフィールドな訳です。
過去には「海岸通り(アルバム『ソルファ』収録)」って曲が人気だったけれど、今回はさらに「湘南の海」というバッチリなモチーフを設定していて、結果的になかなか多彩な主人公達が揃ったラインナップになっている。「鵠沼サーフ」は孤高に波に挑むナイーヴなサーファー少年だったり、「江ノ島エスカー」はまだまだウブな『埼玉のヤンキー』の恋物語だったり。
単に失恋を描いた曲でも、バラードからアップテンポまで揃っていて、曲の面でも充実しているね。「腰越クライベイビー」なんて、「腰越」という単語からうまく広げたな〜、って感じで。
ただまぁ、情景を創造できるかは、実際に江ノ電に乗った事があるかが少々重要かもしれない。乗った事があるだけじゃなくて、あの海岸線をドライヴしたことがあるかは大きいかもな。ちょっとでも知っているとね、「七里ヶ浜スカイウォーク」の『海辺のファーストキッチン』って言葉が出るだけで「うおっ!」となるからね。
少しづつ登場させてるご当地小道具の使い方が上手いんだよな〜。タイトルにもあるけれど、やっぱり『ブンガク』の名を冠してるだけあって……小説というよりはもちろん詩なわけだけれど、「由比ヶ浜カイト」の詩を<それでも何度も君を探して 空に何度も弧を描くトビ>と終わらせる感じ――、人間ではなくて、あの辺でよく飛んでる"トビ"に仮託させる事で、最後は主人公の想いを全部大っきな空に乗せちゃうあたりが詩人であると同時に、小説的だと思う。
ご当地モノの詩を描くなら、もっと徹底しても良かったわけだが、あえて登場させる湘南海岸のモチーフをかなり絞っている。ほとんど想像で詩を書いてるとは思うんだけれど、そんな風景の一枚一枚の切り取り方が本当に瑞々しいというか……。結果的にはこの作品、なかなか普遍的なものになったんじゃないかなと思うぜ。この湘南の風景を映画で撮っちゃうと、なにもかも全部記録され過ぎちゃうし、小説でもディティールを突き詰めると「時代」が持つ雰囲気が抜けきらなくなるけれど、この音楽は時代の「古臭さ」をうまく削り落としつつも、この時代の若者が持ってる「湘南の(センチメンタルな)空気感」をすごく上手に封じ込めているように思うな。
「相手に想像させる作品」は、享受する相手にも書いた本人と共通したフィールドが必要とされるけれど、この作品の描き方は、その地雷を上手く潜り抜けている気がします。収録されている一曲一曲は有名にはならないだろうけれど、このアルバムは今後のアジカンのキャリアの中でも異色作になるだろうし、同時に代表作にもなるんじゃないかな?
もしかしたら、『ASIAN KUNG-FU GENERATION』というバンドよりも長く生き残っていくような気もする。「バンド名はよく判らないけれど、湘南と言えばこれを聴いとけよ!『サーフ ブンガク カマクラ』!」みたいに。ぜひ今10代、20代の皆様、このアルバムをじーっくり聞き込んで、そんで40、50代になってから噛み締めるように聴きなおして下さい(笑)
結婚して、子供が出来て、夏休みに家族全員で湘南へドライブに行く際は、129号線を折れたあたりでこのアルバムの再生ボタンを押してね!みたいな。ああー、いいなぁ!w
そういう、世代の共通言語にもなり得る作品だ。このアルバムはジワジワ売れるといいな。あとは私たちが、どんな作品に価値があるのかを見極めて、このアルバムを"消費"の荒波から協力して拾い上げなきゃいけない。ご存知の通り「バンプ的な」ロックミュージックがブームになっていて、似たバンドがどんどん出てきてる現在で、本当にいい作品を風化させない為にはどうすればいいか、みんなで考えていきたいな。
ひとつ、このアルバムの残念なポイントを挙げるとするならば、この作品を聴いて「アジカンいいね!」ってなった人に、『ワールド ワールド ワールド』とかは薦めづらいということ(笑)
このアルバムのどこが好きになったかが大事だね。歌詞や世界観だ!って言われた場合、他のアルバムを聞くとガッカリされるかもしれん……。
スイッチが入ればどっぷりと浸かれる魅力的な作品世界を持つアルバムです。ぜひ手にとってみてください。
posted by ゆうろく at 16:23| Comment(0) | TrackBack(0) | ■REVIEW
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